建設業における資材調達の価格交渉

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導入

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同じメーカーの同じ製品なのに、なぜこれほど大きく見積額が変わるのか?

建築やリノベーションの現場に携わる中で、私は幾度となくこの疑問に直面してきました。

もちろん、これは特定の業者が不当に利益を得ているという単純な話ではありません。
現在、建築業界を取り巻く環境は極めて過酷です。
メーカーは世界的な原材料費の高騰に悩み、物流コストの増大や若年層の減少による深刻な人員不足は、一次卸や二次卸といった商社の負担を重くしています。

しかし、そうした個々の努力とは裏腹に、日本特有の「重層的で不透明な商流」が維持されていることで、最終的なコストが膨らみ続けているのも事実です。
この「ブラックボックス」を放置することは、経営者として、今の時代にそぐわないと感じています。

私が商流の最適化にこだわる理由は、ただ単に安く仕入れたいからではありません。
まずは、自社の社員のため。
自社にとってのコストを削ることで、現場で働くスタッフの待遇改善や、より余裕のある労働環境を確保するためです。
次は、お客様のため。
仕入れを抑えることで浮いた資金をワンランク上の設備や質の高い無垢材といった「顧客価値」へ還元し、心から満足いただける商品を提供するためです。
いわゆる三方よしですね。

大切なのは、業界に関わる全員が疲弊する仕組みではなく、適切な場所へ適切な対価が届く「健全なルート」を自ら選ぶことです。
私はリフォーム事業や不動産管理という創造・保守の両面からこの課題に取り組み、主要な資材の調達ルートを再構築することで、全体の仕入れコストを大きく削減することができました。

今回は、私が実際にコストダウンに成功した3つの資材についてお伝えしたいと思います

架橋ポリエチレン管

水道配管の主流である「架橋ポリエチレン管」は、最も商流の無駄が見えやすい資材の一つです。

これまでのルートと課題

  • 旧ルート: メーカー ➔ 一次卸 ➔( 二次卸) ➔ 地元の管材屋 ➔ 施工店
  • 課題: 間に介在する業者が多すぎるため、それぞれの利益が上乗せされていました。
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メーカーによってはほぼ定価なんてことも…

最適化したルートと手法

  • 新ルート: 特定卸とのダイレクト契約
  • やり方: 現場ごとの「都度発注」をやめました。リノベーションで標準的に使用するサイズ(13Aなど)をあらかじめ予測し、自社で在庫を持つ「ボリュームディスカウント」を導入しました。
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パイプはもちろんですが、よく使用するエルボやチーズといった継手だけでも、まとめて買うだけで大幅なコストダウンにつながりました。

特定卸とは

メーカーと購買量や在庫点数の豊富さで交渉して、特価で契約している商社が存在しています。
そこと特定の商品、品番をロット購入で単価交渉することが、コストダウンへの近道です。

結果-多重構造からの脱却

結果として、今までは管材屋さんの言い値で仕入れていた部分も大きかったのですが、わかりやすく、また以前よりも安い掛け率で購入することができるようになりました。
卸先的にも一度あたりの配送に対する売上は向上しているため、三方よしの結果となりました。

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水道材料を取り扱う管材屋さんのような流通業者の役割は「物流」と「在庫保管」です。
その機能を自社で一部肩代わりすることで、中間マージンを削ることに成功しました。

エアコン用冷媒管

エアコン設置に不可欠な冷媒管は、「銅」の相場によって価格が激しく変動する資材です。

これまでのルートと課題

  • 旧ルート: 不安定な仕入れ価格、または材料費込みの「材工価格」
  • 課題: 業者は相場変動による赤字を避けるため、どうしても高めのバッファを積んだ価格を提示せざるを得ません。
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高騰が続いていると先週までと価格が違うなんてこともざらです。
モノがないと工事もできないから言い値で買うしかなかったり…

最適化したルートと手法

  • 新ルート: 銅相場を注視した、専門商社からの直接調達
  • やり方: 年間のエアコン設置台数から逆算し、相場が落ち着いている時期に「バルク買い」で先行確保します。職人さんとは「資材支給(手間受け)」で交渉することで、材料費の不透明さを排除しました。
バルク買いとは

国産のものも一部ありますが、今やペアコイルもほとんどが中国などの外国で生産されています。
それらはコンテナで輸送されてくるのですが、そのコンテナごと購入してしまうというのがバルク買いです。

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お得ではありますが、バルク買いはかなりの数量になります。
私は複数の会社と倉庫をシェアして保管するようにしています。

結果-マーケット連動型商品への対応

相場物だからこそ、商流を短くし、価格変動のクッションを排除するメリットは絶大です。
もともと価格競争が激しい商品のため、大幅なコストダウンとは言えませんが、毎年積み重ねれば大きいでしょう。

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需要期でほぼほぼ捌けますし、余ったら来年に回してもいいです。
また、買取に出しても赤字にはなりにくいのもメリットですね。

断熱材

断熱材は、その「サイズゆえに、商品代金よりも「送料」がネックになる特殊な資材です。

これまでのルートと課題

  • 旧ルート: メーカー直送便、近隣建材店からの少量配送
  • 課題: メーカー直送には最低ロットの縛りや現場不可のことが多く、近隣店からは「いつでも届けてくれる」という便利さの裏で、配送トラックの運賃が高い割合で含まれていました。

最適化したルートと手法

  • 新ルート: 1次拠点からの自社引き取り、断熱商社のEC仕入れ
  • やり方: 大量に必要な場合は卸先から紹介を受けてメーカー倉庫からの引き取り、小ロットなものはECから調達するようにしました。
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先日は少しだけ足りなかった配管保温材を2M分だけ購入。
こんなに嵩張るものをネット通販で買える時代に感謝ですね。

結果-物流コストの壁を超える

リノベーション工事の際に防音の要望などがあると、ロックウール系断熱材などは大量に使用することがあります。
そうしたものもルートを見直すことで、大幅に仕入れ値を削減できます。

まとめ

いかがでしたでしょうか。
結局まとめて買うのが一番のコストダウンという結論になっていて、「何だよ」と思った方もいらっしゃると思います。

クロ

私も書き出していて結果はこうなるよなぁ…と思っていました。

建設業界以外でもそうかもしれませんが、一番のコストはやはり人件費です。
それに加えて、昨今の車両本体価格や燃料費の値上げもあり、物流コストはメーカーや商社にとって大きな負担になっています。
彼らのそうした課題に対して「いいから値下げして!」ではあまりにもお客様根性が過ぎてしまう。
そこで私が使ったのが先程までの例で挙げたような一括購買、そして引き取りを用いた価格交渉です。

クロ

既存の当たり前を疑い、構造を変えるというスタンダードなアプローチですが、以外とできていない方もいらっしゃるのではないでしょうか。


現場で汗を流して施工技術を磨くことはもちろん尊いことですが、それと同じくらい、「材料が現場に届くまでの地図」を書き換えることが、大きな利益を生みます。
理想の時間は、自分の手で選び、作っていくもの。
この記事が、あなたにとって新しい一歩を踏み出す小さなきっかけになれば幸いです。

Thank you for sharing !

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